古民家の「泣き声騒ぎ」コピー

古民家や空き家を扱っていると、時々「えっ、マジで?」と思うような依頼が飛び込んできます。
和歌山の山あいで「コミンカスタイル不動産」を営む岡(おか)も、そんな“事件”にたびたび巻き込まれる一人です。
今回は、私自身も胸がじんわり温かくなった、とある空き家の出来事をご紹介します。


泣き声がする空き家?大阪の女性からの突然の依頼

「実家の空き家から、女の泣き声が聞こえたんです!」

ある日の夕方、岡のもとに大阪から一本の電話が入りました。
声の主は、和歌山にある実家を長い間放置していたという女性。
突然、近所の方から「夜な夜な泣き声がする」と聞き、怖くなって連絡をしてきたと言います。

オカルトではなく不動産屋ですけど…?

岡は思わずこう返しました。

「泣き声? うち、不動産屋ですから……オカルト駆除は別料金ですよ?」

冗談交じりに返したつもりが、先方は本気で怯えている様子。
これは早めに現地へ行かないとまずい、と岡は夜の山道を車で進むことにしました。


古びた家に響くすすり泣き――音の正体は?

現場に到着した岡は、懐中電灯を片手に家の中へ。
風で軋む木の音と、ほこりの匂いが入り混じった、典型的な空き家の雰囲気です。

そして……。

「うぅぅ……ひっく……」

確かに“声”が聞こえる。

「おいおい…ほんまに泣いてるんか?」
背中にじんわり汗をかきながら、岡は奥の部屋へと進みました。

声の主は“足踏みオルガン”だった

部屋の隅にあったのは、年代物の足踏みオルガン。
よく見ると、鍵盤の上には薄いほこりが積もり、ペダルはサビついています。

その瞬間、外から風が吹き抜け――

「ひゅぅぅ……うぅぅ……」

どうやらオルガンの内部に風が入り込み、共鳴して“泣き声”のように聞こえていたのです。

「なんや…幽霊ちゃうんかい。ビビったわ……」

岡は胸をなでおろしました。


依頼人の女性が涙ぐんだ理由

後日、女性立ち会いのもとで岡が音の正体を説明すると、
彼女はふとオルガンに視線を向け、そっと触れるように手を置きました。

「母が教師だった頃、小学校で使っていたオルガンなんです。
音楽が大好きで、子どもたちにもよく弾いてあげていて……」

言葉の途中で、思い出が込み上げてきたのか、女性は目を潤ませていました。

アルバムの中にあった“忘れられない一枚”

家の棚から取り出してきた古いアルバムには、
笑顔の子どもたちと、優しそうな女性の姿がたくさん残されていました。

岡はページをめくりながら、
「このオルガンが泣き声のように聞こえたのも、何かの縁かもしれませんね」と声をかけました。

女性は深くうなずき、古い家の匂いが漂う和室で、しばらく母の思い出に浸っていました。


空き家は“地域文庫”として再生、オルガンは子どもたちの歌声を支えることに

空き家をどうするかという話し合いの結果、
「地域のために使ってもらえたら嬉しい」という女性の希望で、
その家は地域文庫として生まれ変わることに。

オルガンは修復され、再び音を奏でる

専門の修復師に依頼し、オルガンも見事に蘇りました。
子どもたちが文庫で歌うとき、オルガンの柔らかい音がそっと寄り添う――。
そんな温かい風景が生まれています。

「泣き声の正体だったオルガンが、今は子どもたちを励ます音を出してる。
ええ話やなぁ」

岡もどこか誇らしげでした。


事件解決後は、いつもの食堂でアジフライ定食

仕事終わり、岡は行きつけの食堂に立ち寄りました。
暖簾をくぐると、魚の香りと温かい湯気がふわっと迎えてくれます。

「昨日は空き家で泣き声騒ぎやったんですよ」
岡が話すと、女将は目を丸くして、

「ほいたら幽霊ら出たんかえ?」

とおどけた調子で言いました。

「いや、音の正体はただのオルガン。幽霊は出てへん」

女将は笑いながら、ご飯をよそってくれました。

不動産の仕事の裏には、こんな小さな物語がある

ただの“空き家調査”のはずが、
持ち主の大切な思い出につながることもあります。

岡はアジフライを頬張りながら、
「今日もええ仕事ができたな」と、ほっと息をつきました。


おわりに:空き家には“物語”が眠っている

古民家や空き家は、ただ古いだけではありません。
そこには、家族の思い出や地域の歴史、
そして時には“泣き声”を生むオルガンのような、意外なドラマが潜んでいます。

岡のように、

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